図5.凍結比体積の異なる層が相互作用することで、さまざまな残留応力が発生し、部品が変形する。
加工誘起残留応力とキャビティ内残留応力の比較
成形シミュレーションでは、キャビティ内の残留応力データよりもプロセス起因の残留応力データの方がはるかに有用です。以下に、2 つの用語の定義とその違いを示す例を示します。
加工誘起残留応力
部品が射出されると、金型キャビティからの拘束が解除され、部品は自由に収縮・変形します。部品が平衡状態に落ち着くと、部品内部に残る応力は加工誘起残留応力、または単に残留応力と呼ばれます。加工誘起残留応力には流動誘起と熱誘起があり、後者が支配的です。
キャビティ内残留応力
部品が金型キャビティ内で拘束されている間、凝固中に蓄積される内部応力はキャビティ内残留応力と呼ばれます。このキャビティ内残留応力は、射出後の部品の収縮や反りを引き起こす力です。
例
差収縮による反りで説明した収縮分布は、下図左下に示すような射出成形品の熱誘起残留応力プロファイルにつながります。左上図の応力プロファイルはキャビティ内残留応力であり、射出前の成形品は金型内に拘束されたままです。部品が射出され、金型からの拘束力が解放されると、部品は収縮して反り、内蔵された残留応力(一般的には図のように引張応力)を解放し、平衡状態に達します。平衡状態とは、部品に外力が加わっておらず、部品断面にかかる引張応力と圧縮応力が釣り合っている状態を意味します。右側の図は、部品の厚さにわたって不均一な冷却が行われ、それによって非対称な残留応力分布が生じた場合に対応します。
図 6.キャビティ内の残留応力プロファイル(上)と排出後のプロセス起因残留応力プロファイルおよび部品形状(下)。
熱による残留応力の低減
十分な充填と金型壁温度の均一化をもたらす条件は、熱による残留応力を低減する。これには以下が含まれる:
- 適切な充填圧力と充填時間
- 部品の全表面を均一に冷却
- 均一な肉厚